水の都・蘇州の新旧の水路を巡る

蘇州は水の都として知られている。紀元前6世紀、呉王・闔閭がこの地に都城を築き、運河で市街を囲み、水路を縦横に走らせたことが始まりだ。

呉と言えば三国志の呉の方が有名だが、この呉国はそれより800年ほど前にさかのぼる。呉の闔閭は、今、テレビで放映されている『孫子列伝』という中国歴史ドラマにも登場するが、いわゆる酒色にふける凡愚の王だ。それがたまたま孫子と言う軍事の天才を登用したことがきっかけで、戦国の世に覇を競うことができた「幸運の持ち主」として描かれている。

蘇州の旧市街に出ると、市内のあちこちに池を配した庭園が点在し、観光名所になっている。しかし、正直、中国四大名園と言われる「留園」でさえ日本の回遊式庭園と比べると、いささか物足りない。むしろ、山塘街(写真上)などの水路沿いの方が趣があり、散策には向いている。

山塘街は、唐の詩人・白居易が蘇州の知事として赴任した時、水路が埋まっているのを見てこの地区を開削し、灌漑と水上交通の改善に努めたことに由来する。以来、この水路一帯は一大商業地区に発展し、またその景観の見事さもあって文人墨客にも愛されたそうだ。今も観光地として整備されたため、昔ながらの水郷の風情を味わえる。

水路と言えばもうひとつ、現代中国を象徴する新しい水路が市の東部にできている(写真下)。旧市街を抜け、1時間ほどバスに揺られた先に、コンベンションセンターを核にした水上公園があり、その周囲にはオフィスビルや高層マンションが立ち並んでいる。さながら千葉の幕張を思わせる大規模都市開発の現場だ。この商業施設の核となる久光百貨店の横に、現代的な水路ができていた。

ここは久光百貨店をキーテナントにした大型ショッピングモールだ。向かい側にはレストランやファストフードなどの飲食街やブティックなどが並び、この間に挟まれて、おしゃれな水路が作られている。モールはまだできたばかりのため、休日にもかかわらずほとんど人を見かけなかったが、3〜5年後、周囲のマンションが埋まる頃には新たな観光名所になっているはずだ。

時代を超えてつながる2つの水路。蘇州は、今でも水の都であり続けようとしている。