古都・慶州は、韓国の“江戸村”になっていた!


慶州(キョンジュ)は、7世紀前後に朝鮮半島を統一した新羅の王都である(〜935年)。“屋根のない博物館”といわれるのは、市内のあちこちに歴代の王墓である古墳などが見られ、仏教関連の遺跡も多く残っているからで、日本で言うなら、ずばり「奈良」に似ている。見どころは満載で、十二分に楽しめる観光名所だ。最初に国立博物館に行ったが正月休みのため、翌日見学することにし、建国神話の残る「鶏林」周辺を回った。


新羅の建国神話はなかなかユニークだ。かつて新羅には6つの村があり、その子孫は天から降臨した人たちだった。ある日、6つの村の村長が集まり、国を作ろうと相談していたところ、雷が鳴り、稲妻が落ちた。落ちた場所に行くと白馬がしきりにお辞儀をしている。よく見ると「紫の卵」があった。卵を割ると中から容姿端麗な男の子がでてきたので、泉で体を洗うと全身が光り輝いたという。村長たちは喜び、これこそ天から授かった天子である。というので、次は后を探そうということになった。すると今度は鶏竜が現れ、その左脇からそれはそれは美しい女の子が生まれた。しかし、嘴が付いているので川の水で洗うと嘴がはじけておちた。その後、この二人が13歳になった時に結ばれ、新羅を建国することになったという。


古代朝鮮の建国エピソードである「檀君神話」は、ぺ・ヨンジュンが主演した「太王四神記」でも有名になったが、この新羅の建国神話は日本のイザナギイザナミの神話によく似ていると言われている。しかし、むしろ卵から生まれた王子と聞くと、桃太郎に似ていなくもない。この神話に出てくる場所が鶏林である。ちなみに、「古代朝鮮」に詳しい井上秀雄氏によると、この神話に特徴的なのは、新羅は貴族たちによる集団統治が基本で、王自体は絶対的な権威は持っていないこと、また女性の地位が高いことにあるという。


この様子がよくわかるのが、新羅初の女王と言われる「善徳(ソンドク)女王」を描いた歴史ドラマだ。今、慶州が再び脚光を浴びているのもこのドラマのおかげで、実は日本でもテレビ放映されていて、もちろん私も楽しみに見ているひとり。


善徳女王は実在の人物で、朝鮮半島統一の立役者・金庾信(キム・ユシン)将軍に支えられ、新羅隆盛をもたらした人物のひとり。実際には、卑弥呼のように、シャーマン的役割を担った女王として君臨したようだ。1000年以上も昔に天文観測台を作ったのも彼女で、その天文台は今も市内に残っている。ドラマでは、子孫を滅ぼすと言われた不吉な双子のひとりとして生まれたために、遠方に逃がれて生き延びた善徳女王が、男装して親衛隊に入り、後に女王として復帰するまでを描く。この親衛隊は「花郎ファラン)」と言われ、儀式の際にはきらびやかに化粧をして現れるイケメン少年軍団でもあり、新羅の軍事力の中核を担ったのだそうだ。この女王の敵役として、男たちを手玉に取るミシル役のコ・ヒョンジョンがオヤジ泣かせの悪女ぶりで、いい演技をしているので、一度、ご覧になってほしい(笑)。


このドラマの人気にあやかって作られたのが、この日に泊った慶州郊外の普門リゾート近くにできた時代劇体験テーマパーク「新羅ミレニアムパーク」(写真参照)。往時の街並みを再現し、新羅時代の歴史を味わえる韓国版の“日光江戸村”といったところ。民衆劇のような時代劇のアトラクションのほか、ドラマ「善徳女王」の舞台セットなどもあって、韓国時代劇好きにはたまらない趣向がいっぱいだ。いい大人がと言われそうだが、正直はまってしまった。だいたい、韓国時代劇は中年男性ファンに支えられている面があり、私のようなミーハー中年オヤジがドラマから入って朝鮮の歴史を勉強していくというパターンが多い。お仲間たちよ、慶州に集まれ!