世界遺産の仏国寺(ブルグクサ)は素晴らしかったが・・・


西面近くの釜田(プジョン)駅で地下鉄から鉄道に乗り換える。ここから2時間の汽車の旅だ。夜8時に仏国寺駅に着いたが、田舎駅とあって、電車が行ってしまうと、駅周辺は閑散として真っ暗だ。タクシーを探したが、一台もいない。駅員に尋ねたら、向かいの乗り場で待てと言う。彼の言葉を信じて待つことしばし。しかし、世界的な観光地にもかかわらず、なかなかタクシーは来ない。ようやく30分ほどしてタクシーが来たが、冬の韓国で外で待つのはさすがに厳しかった。それと、鉄道の旅は好きだが、韓国の地方を回るなら長距離バスがお勧めだ。バスの方が便数が多いし、目的地まで安心して乗っていられる。鉄道だと、降りる駅がわかりにくいのが不安だった。


宿泊したコウロンホテルは仏国寺のすぐ近く。翌朝は苦労せずに歩いて10分ほどで仏国寺に着いた。ここは世界遺産に認定されたこともあり、あまりに有名なお寺である。日本から修学旅行で来る学生も多く、いわば韓国の法隆寺の赴き。日本と違うのは石造りが基調になっていることか。ひさしぶりにゆっくり見学できた余裕から、ここから1時間ほど山道を登った石窟庵を目指す。これが悲惨な山登りになるとも知らずに・・・。


石窟庵には、新羅時代の石彫の阿弥陀如来がある。写真で見ると、これがなかなか美しい顔立ち。正直、連日の山登りで疲れていたが、「地球の歩き方」には、「ここから歩いて登りたい」のコメントがあり、こうなったら登るしかないと決意した。今思えば、「冬でも」とは書いていなかったのに・・・。


仏国寺の正門横の林道に踏み入った。確かに私の前を何人もの参拝客が歩いているので、この道を行くしかないのだろう。しかし、林道は凍結し、なかなか一歩が踏み出せない。むしろ、転ばないで歩けるかの方が心配だ。こわごわ千鳥足で登りつつ、しかし、このテンポで果たして目的地までいけるか不安になる。引き返すか、このまま登り続けるか。片側が崖になり、転げ落ちる危険も。半ば泣きそうになりながら、苦行のような登山道を登りきり、ようやく石窟庵の入り口に。ああ、神も仏もおりました(笑)。


石窟内にある阿弥陀如来は、命がけ(!?)で来ただけのことはあり、それは見事な石像だった。石像の前では高僧が説教をし、信者が彼を取り囲んでいる。我々はガラスで仕切られた石窟の外からその様子を眺める仕組みだ。この密教的な佇まいに、かつて日本に渡ってきたころの仏教の姿を見たような気がした。


帰りがけに土産物屋に立ち寄ると、店主が日本語で話しかけてきた。「この数珠は、鳩山さんも本木さんも持ってるものだよ」 本木さん?? 「知ってるでしょ? 『おくりびと』の本木さん」。モックンは、国際的な有名人になったんだ、と感心してしまった。


帰り道はなんとかタクシーに相乗りさせてもらい、無事、ホテルに帰還。午後は慶州(キョンジュ)郊外に韓国政府が国を挙げて建設した観光リゾート・普門観光団地にある慶州ヒルトンに早めにチェックインした。一眠りしてから、慶州市内に向かう。ついに憧れの慶州だ。この町では自転車での観光が向いている。疲れも忘れて、町中を走り出した。