釜山は旧正月。街は若者たちで溢れていた!


対馬北部の日田勝港から高速船で釜山港へ向かい、国境を超える。乗船を待つ間、近くの寿司屋に立ち寄った。対馬に来る韓国人旅行者はマナーが悪いと聞いていたが、確かに店を出入りする韓国人は、子供も大人も扉を閉めない。これが何度も続く。店の女将と顔を見合わせ、苦笑いする。なるほど、こんなことが韓国人の評判を落とす理由なのだろう。船の中でも、隣に座った30歳過ぎの母親の傍若無人さに苛立った。その後も、釜山のレストランで後ろにいた若い男性が椅子を引いて私の椅子にあたっているのに、何もエキュスキューズしない。この国の人間は、「すいません」感覚を欠いているのだろうか。韓国は「東方礼儀の国」のはずだったのに。


釜山港までは約50km、高速船でわずか1時間15分の至近距離だ。飛行機で一気にソウルに飛ぶ味気なさに比べると、船で南からそろりと上陸する方が、こっそり密入国しているようなスリルがあっていい。それにしても海から見た釜山の街の大きさに驚いた。ここは香港か横浜か? 過疎の島から突然人口400万人の大都会にたどり着いた田舎者のようだ。


韓国に来たのは十数年ぶりだが、ハングルの氾濫にはやはり戸惑う。ホテルに辿りつくまでは気が抜けない。日本人旅行者の多い釜山駅に近いコモドホテルを予約していたが、フロントマンの日本語での接客に安堵。これからの旅の不安は一挙に解消した。


この日のテーマは、翌日の汽車での「慶州」行きに備え、地下鉄で電車に乗る練習をすること、そして、現地の居酒屋に乗り込むこと、このふたつだった。釜山駅までは歩けたが、地下鉄の切符の買い方が分からない。券売機の前で何度もほかのお客の買い方を見たのだが、それでも分からない。ようやく、「地球の歩き方」に、釜山には3本しか地下鉄路線がないと書いてあったことを思い出し、「路線」番号らしきボタンを押すことに気づいた。そうすると、ティスプレー一面にハングル表記の駅名がずらり・・・。これでくじけたら鉄道には乗れない。かろうじてハングル読みは覚えたこともあり、なんとか中心街の「西面 sygmen」のボタンを探り当て、切符が買えた。後は簡単。駅名は漢字表記もあり、車内放送では日本語の案内もあった。コツをつかめばどこへでもいけるぞ。


居酒屋探訪はさらに簡単だった。長年、酒を飲んできたものの嗅覚が勝る(笑)。酒飲み文化は万国共通。どうもこのあたりが怪しいと、気になる路地に入ってかすかなネオンを頼りに歩いて行くと、渋谷の道玄坂裏手のような飲み屋街に行き当たった。同行者がいたら、その神業に目を見張ったろうな(笑)。


ちょうど旧正月だったこともあり、繁華街は若者たちで溢れていた。こじゃれた居酒屋に入り、隣の若者たちと同じものを注文する。出てきたのはユッケとハンバーグ? それと鍋が出てきた。これは必ず付くもののようだが、みな鍋には何も入れず、時折スープのようにスプーンですくうだけ。鍋で煮込んだほうがうまいのに、と思いつつ、ユッケと焼酎でからだを温めた。


釜山中心街の「西面」を歩いていて、ひと際賑やかだったのがゲームセンターだ。中はカップルも多かった。壁際にずらりと2人用のカラオケボックスが並ぶ。これは日本でも流行りそうだな。16分割されたディスプレーをタイピングの要領で叩くゲームは日本でも見たことはない。「太鼓の達人」の変形のようだ。人垣ができていたのは、ダンスダンスリボリューションで、ここで踊っていた若い男の超人的な足裁きにたまげてしまった。外に出ると、日本でもおなじみのファミリーマートの店頭に、お見舞いに持っていくような大きな籠にチョコレートが詰めてあった。店員に、これは旧正月のお祝いか? と聞いたら、バレンタインのプレゼントだと。韓国での愛の表現は、ドラマ同様、やはり大げさなのである。