四番施福寺を目指し、和泉の山中を歩く

2008年の年末、再び西国巡礼の旅に出る。さすがにクリスマスシーズンにお寺参りする人は少なく、閑散とした境内をひとり寂しく歩くこととなった。わずか二カ月ほど前に和歌山を回ったばかりだったのに、何故、年末に・・・。実は前回の巡礼行の直後に、突然の異動を言い渡されたのだ。すでに予想はしていた。担当する雑誌の部数は伸びず、編集方針をめぐって社内会議では気まずい空気が流れていた。おまけに急激な景気悪化もあり、挽回の途が見えず、正直、開き直るしかない・・・という状態。異動の辞令が出た後も途中までしかかっていた編集作業を終えるまで仕事は続けた。最後の校了を終え、クリスマスイブ前夜に深夜バスに乗って、大阪を目指した。


今ひとつ気持ちが吹っ切れないうえ、深夜バスではゆっくり眠れるはずはない。朝6時になんばに到着したが、カラダはまだ起きていない。開いていた喫茶店でモーニング・コーヒーを飲み、泉北高速鉄道で約1時間乗ると最寄の和泉中央駅に。ここは学園都市風の新興住宅地で、まだ出来たばかりのような新しいターミナル駅だ。ここからバスで槇尾山を目指す。ガイドブックによると、紀州と和泉を隔てる標高600mのこの山上にある四番札所の施福寺は、西国の中でも難所と謂われている。これゃ、結構きつい登りになりそうだ、と覚悟を決めた。


終点のバス停から歩いて30分、急勾配の参道を登るが、意外とあっさり施福寺に到着した。それもそのはず、バス停がここまで伸びたのは最近の話らしい。ところが、これで調子に乗ったのが運の月。ここからダイヤモンドトレイルという自然歩道を通って紀州側に行くことにし、滝畑ダムから光滝寺を目指した。後に後悔することも知らず・・・。


この山道はきつかった。これが本来の巡礼道なのかもしれない。1時間半ほど歩いて、ようやく滝畑ダムに着く。ここからさらに30分歩いて光滝寺へ。さらにこの奥に滝畑四十八滝のひとつ「光滝」がある、と聞けば、滝好きの私が行かないわけはない。キャンプ場を抜け、河原沿いの道を歩く。河原に下りると、周囲は切り立った崖で、何か薄気味悪いムードが漂うが、目の前に現れた「光滝」はとても神々しい姿。これはなかなかの「美滝」だ。この滝を見て、この旅に来た事の迷いが消えた。まさにスピリチュアル・スポット。神が降りた瞬間だった。


滝畑バス停に戻って、南海線河内長野駅へ。まだ時間があると、この日は藤井寺まで足を延ばし、五番の葛井寺(ふじいでら)へ。駅前の商店街の中にあるこの寺は半島からの渡来人が創建した寺だそうだ。すぐ近くに応神天皇仲哀天皇の古墳が並んでいるが、いささか歩き疲れたこともあり、この日はこれで切り上げ、明日からの奈良行きに備えた。