西国巡礼行

07年11月11日に、那智山青岸渡寺を訪れてから早2年。昨年12月25日に西山・善峰寺までたどり着き、西国33カ寺のうち、20番まで回ったことになる。ちょうど昨年末で早期退職したこともあり、今回の巡礼行はひとつの結節点となった格好だ。


かみさんが傾倒する白洲正子の『西国巡礼』を読んだことが西国行きの呼び水ではあったが、この巡礼行は私にとってなかなか示唆的なものとなった。


そもそものきっかけは、関西出張の帰りに、一度行きたいと思っていた近江八幡に寄り道した時のこと。豊臣秀次が治世したこの町並みの素晴らしさに感動しつつ、湖畔に建つ長命寺まで足を延ばした。出張中のため、革靴を履いて長い石段を登る羽目となったが、たどりついた境内から眺めた琵琶湖の景観の美しさに、しばし言葉を忘れた。


信長も眺めたであろうこの琵琶湖の景観は、これまで私が見た日本の風景の中でも特筆すべき部類のものであった。長命寺が西国31番札所であることは、このとき初めて知った。ここではあえてご朱印はもらわなかった。「これは一番から回らなくてはいけないな」。そう思ったのが西国巡礼を始めたきっかけである。その年の11月に、奈良に出張。たまたま、東京駅で西国巡礼のガイド本を買い、道々、読み込んでいたことで決心が付いた。「このまま那智まで行こう」と。以後、出張のたびに、巡礼するようになったのだ。